「普通できるよなっ!?」
「キモいんだよっ!!」
洗面所で歯磨きをしていたら、死角からいきなり大声を出されるものだから、驚いた。
そこには誰もいなかった。
フラッシュバック。過去の映像が蘇っただけだった。
発達障害当事者は、過去の恐怖体験やつらかった記憶をいつまでも忘れない特性があります。
受けた傷はトラウマとなって、後遺症として引きずります。
今日は、この「トラウマ」について綴ってみようと思います。
人はなぜ嫌な出来事ばかり記憶するのだろうか?
「trauma トラウマ」とは、もともとは「傷」という意味のギリシャ語が語源だそうです。今では、当たり前のように使われていますね。英語圏でも「トラウマ」で通じるみたいです。
深いトラウマに日々苦しむ人もいれば、自分がトラウマを抱えているだなんて思いもせず、ある日何かのきっかけで、実はトラウマがあったことに気づく人もいます。
いずれにせよ、トラウマを持つ人は、現代には多いのではないでしょうか?
人はなぜか、嫌な出来事をずっと引きずって、忘れられなかったりします。それは何故かと考えてみたのですが、悪い経験のほうが、心に残るインパクトが強いのではないかと思うのです。そして、根が深い。
それは、人から言われた悪口であったり、受けた恐怖であったり、失敗したことだったり、悲しい思いをしたことであったり、きっかけはわずかなことがほとんどです。
忘れればいいのに忘れることができなくて、常に同じことを頭の中で繰り返し考えて落ち込んでしまう、そんな堂々巡りなのが「トラウマ」なのです。
本来、人は皆幸せでいたいはずです。もちろん、楽かった思い出も記憶には残っていますよね。それを思い出している間は、やはり幸せな気分でいられるものです。
しかし、人は悪い思い出のほうを強く思い出す傾向にあります。
ある人は、自分が気づいていなかった幼い頃の心の傷を、ある日フラッシュバックとして突然思い出し、それを家族にぶつけ、泣き叫んだ時に初めて、自分の深層心理の中にひどいトラウマがあったという事実に気づいたそうです。家族も驚きましたが、本人が一番驚いたそうです。
人には、封印された思い出というものもあるということですね。戦争体験者の方にも、そのような方は多いと聞きます。
またある人は、思春期に母子家庭で育ち、愛人であった母のスポンサーから性的虐待を受けていたことを、40歳を過ぎるまで大の親友にも打ち明けられませんでした。
彼女はとても美人で、いつも気品を携えて、面白くて優しくて、面倒見の良い性格ですが、その性的虐待のトラウマだけは、母にも親友にも、長い間伝えることができなかったのです。彼女は、今では心理カウンセラーのような仕事をしています。
トラウマの深さは人によってさまざまなので、一言では説明できませんが、自己防衛本能として備わっているのかもしれないと、ふと思いました。
自分の心が壊れてしまわないように、あえてその記憶は封印されることもあり、また逆に、幾度も幾度も思い出しては、それを繰り返さないようにと願ってみたり苦しんでみたり。まさに「トラウマ」の語源通り、心の「傷」なのでしょうね。
誰かに吐いてしまったほうが、楽になる
トラウマは、口に出してしまったほうが心が楽になるそうです。
こんな事を人に知られたら、嫌だな…恥ずかしいな…自分だけがどうしてこんな目に…と思って長年苦しんできたことも、あえてカミングアウトしてしまうことで、その傷は個性にもなるという事実を知りました。
しかし、そこに至るまでは、実に長い年数とプライドを捨てるという、2つの大きな壁があります。
過去に知人から、「断捨離じゃないけど、1度リセットすると生まれ変わることもできるんだよ。潜在意識のレベルでね。」と教えてもらったことがあります。
今、トラウマに苦しんでいる人に助言するとしたら、一度全部捨てるしかありません。すぐには無理です。
深呼吸して、少しだけプライドを捨てて、まるで自虐ネタにでもしてしまうと、周囲はそれほど変わりません。硬くなっていたのは、自分の考えだけだったと気づける瞬間を待ちましょう。