「孤独死」と聞くと、身寄りのない高齢者が自室で冷たくなっている様子をイメージします。
しかし近年、若い世代にも孤独死が増え、問題視されています。
その中に、発達障害当事者も含まれています。
今日は、若者の孤独死についてお話しようと思います。
孤独死とは?
1人きりの部屋で具合が悪くなり、助けを誰も呼べない、誰にも気づいてもらえないまま亡くなることを、孤独死または孤立死と呼びます。
孤独死や孤立死に自殺は含めませんが、自殺を思いとどまったけれど、それが原因で具合が悪くなり、誰にも気づいてもらえないまま死に至るケースもあり、「どこまでが自殺でどこまでが孤独死なのか」という区切りははっきりしていません。
なぜ若者の孤独死が増えているのか
東京都監察医務院の報告によれば、平成28年度に東京23区内で孤独死した人のうち、約1/4が50代以下の、働き盛りと言われる若い世代でした。
10代や20代、30代の若者も多く、孤独死が決して高齢者だけの問題ではないことが明らかになっています。
高校卒業後、進学を機に上京して、1人暮らしを始める若者は多く、その後、結婚やパートナーとの同棲をしなかった場合、1人暮らしがずっと続くケースがほとんどです。
家族や同居人がいれば、具合が悪いときにすぐに気づいてもらえますし、助けを求められます。
また、おせっかいなくらいに構いあい、気軽に自宅を行き来できるご近所さんや友人がいれば、やはり具合が悪くなったときに気づかれないということは起こりにくいでしょう。
しかし、決して少ないとは言えない若者の孤独死の現状からは、具合が悪くなっても助けを求められる人が近くにいない、気づいてもらえないケースが多いことが読み取れます。
人と関わらなくても生活できてしまう
数日連絡が取れない、顔を見ていない。
そんな時に、すぐ「おかしい」「あいつ、どうしたんだ」と心配して訪ねてくれる友人や知人がいれば、孤独死する前に救出され、病院へ搬送されるでしょう。
そうならないのは、何日も顔を見せなくても誰も気づかない、気にならない、おかしいと思わない程度の付き合いしかしてこなかったから、という大前提があります。
子どもの頃に受けたいじめや人間関係のトラウマが原因で、人と関わるのが怖い、距離を置いて接した方が楽だ、と言う人も少なくありません。
また、個人が尊重される都市部では、人と関わらなくても生活できてしまうという側面もあります。
昔は、ご近所とのつながりがもっと密接で、隣近所にどんな人が住んでいるのかを知っていて、顔を合わせれば挨拶をして、世間話をするのが一般的でした。
しかし現在では、引っ越してきても隣に挨拶に行かないのが普通となりました。道で顔を合わせても、挨拶をしない人も増えています。
地域とつながりを持たないことは気楽な反面、いざという時に気づいてもらえない、気にかけてもらえない、ということでもあるのです。
貧困が生み出す若者の孤独死
2020年の東京オリンピックを前に、景気が良くなっているとも言われますが、それは一部大手企業や、それを取り巻く環境にいる人達の話です。
新聞やテレビで言われる「景気の良さ」とは無縁で、貧困にあえぐ若者も少なくありません。
人手不足が叫ばれていますが、多くの企業は正規雇用の人材を求めているわけではありません。
確かに求人倍率は上がり、完全失業率は低くなっています。
しかし、その背景には、非正規雇用での採用が増えただけで、正規雇用の労働者が増えたわけではないという現実があります。
そんな中、非正規雇用の職員が無断欠勤したからといって、すぐに気にかけ、様子を見に来てくれる職場、上司がどのくらいいるでしょうか?
もちろん、その職場の環境や、本人が周囲の人とどのくらい交流できていたかも問題となりますが、多くの場合「あいつはバイトだから」「派遣だから」「障害者だから」と簡単に切り捨てられてしまうのです。
非正規雇用で働くということは、生涯年収も正規雇用とは大きな差が出ます。
収入が少ないために、結婚できない人も少なくありません。
結婚して家族がいれば、一人きりで具合が悪くなったとき、誰にも気づかれないということは起こりにくいため、低収入であることが若者の孤独死を後押ししていると言っても良いでしょう。
地域や人とのつながりを作る
この記事を読まれている方の中には「自分も周囲とのつながりが薄い」と心配している人もいるかもしれません。
いきなり濃い人間関係を作るのは難しいですし、急に自分を変えようとすると大きな負担になり、ストレスになります。
まずは、隣近所の人に会ったら挨拶をする。
その日のお天気について、二言三言雑談をする。そのくらいから始めてみて、少しずつ地域の人の顔を覚え、自分を覚えてもらいましょう。
近くに行きつけのカフェを作り、マスターや常連さんと雑談ができるようになれば尚良し、です。
また、恋人を作ることも、他者と太いつながりを持つ有効な手段です。
恋人ともなれば、毎日何かしらの連絡を取り合うことも多く、連絡が途切れたら「どうしたんだろう、大丈夫かな」と遠慮せず心配しあえる存在でもあります。
1人より2人のほうが、できることはたくさんありますし、何より安心です。
生きていく上で、協力し合える人を探してみてはいかがでしょうか。
増え続ける若者の孤独死の裏側にあるのは、社会やコミュニティ、人間関係の断絶です。
貧困が原因の場合もありますが、自分から少しずつ周囲に働きかけることで、つながりを作ることができます。
自分が孤独死しないためにも、よく顔を合わせる人と会話をするように心がけ、密接な人間関係を築ける相手を探してみましょう。