自閉症のきょうだいが荒い言動を繰り返していた頃、私は彼を刺し殺そうとしました。
自分が死ねば早い話なのに、当時の私は自閉症を目の敵にしていました。
「どうして自閉症を生かしておくのか?」
「この子は本当に人間だろうか?」
彼を部屋に閉じ込めて、包丁を持っていたところをオカンに見つかり、失敗に終わりました。
「きょうだいとして、普通の子として接してほしい。」私にはそれが重荷でした。
仲のいい兄弟姉妹なんて、一般の人ですら珍しいのですから。
両親の勧めで一時、祖父母の家に泊まらせてもらいました。
結局、出ていくのは自分。恐怖を与える荒療育には成功した。これで良かったんだ。
しばらくの間、きょうだいとの冷却期間を設けてもらいました。
祖父母が用意してくれた部屋は、畳の部屋でした。
ひんやりと冷たく、心地よかった。
い草の香りが不思議と落ち着いて、畳が好きになりました。
最近では、西洋式のライフスタイルが増えたせいもあり、畳の部屋を持つ家も少なくなっています。
しかし、旅先の温泉宿などで畳の部屋に通されると、なんとも言えない心の落ち着きを感じる方も多いのではないでしょうか?
実は、畳を作るい草の香りは、私たちの心理を穏やかにさせてくれる働きがあると言われています。
今日は、い草の香りの秘密についてお話しようと思います。
い草ってどんなものなの?
い草とは、イグサ科の植物で、原産地は主に熊本県です。
畳には、い草の茎の先と根の部分を切り取った中央部分を使用します。
畳表を仕上げるのには、い草4000本~7000本を必要とするそうなので、とても根気のいる作業を通して、私たちのもとに届けられていることが分かりますね。
い草は畳の製作で有名ですが、帽子や枕の素材としてや、料理に入れて食べる方法もあります。
特に、い草は女性に必要な栄養素である葉酸や、食物繊維も豊富に含まれているので、衣食住を支える重要な植物だと言えそうです。
い草に含まれる香りの正体とは
い草の香りが落ち着くのは、い草に含まれる4つの成分が影響しているからだと伝えられています。
以下に、成分ごとに詳しく見て行きましょう。
1.フィトンチッド
い草に一番多く含まれている成分です。
フィトンチッドは、いわば森林の香りであり、殺菌作用も持つとされています。
この成分はストレスホルモンを減少させたり、リラックス作用があります。
フィトンチッドは、まるで森林浴をするときのような、さわやかな感覚をもたらしてくれるのです。
2.ジヒドロアクチニジオリド
言いにくっ。舌噛みそうですね(笑)
この成分は、自身の香りで落ち着かせるというよりも、他の香りを引き立たせる特徴があります。
だからこそ、私たちの心理に、より心地よい香りをもたらすのでしょう。紅茶や緑茶にも含まれる成分です。
3.αーシペロン
漢方薬にも含まれる成分で、リラクゼーションを促します。
漢方薬になじみのある方は、この成分が入ったものを飲んだことがあるかもしれませんね。
4.バニリン
バニリンは、甘いバニラに含まれる成分です。
畳とバニラはアンバランスな雰囲気がありますが、リラックス効果がとても高く、香水などに使われることもあるそうです。
い草の香りは、これらの4つの成分が上手くミックスされながら、私たちにアプローチしてくれます。
特に、フィトンチッドとαーシペロン、バニリンは強いリラックス効果と鎮静作用を持っています。
「なんだか落ち着かない」「イライラする」と悩んだときは、畳がある場所に足を踏み入れることで、大きな発見があるかもしれません。